仏具探しというのは大変悩ましいものがあります。
今の時代、現代仏壇というのが普及しているので、昔よりはハードルが低いと思われますが、それでも、いろいろ仏壇屋に行ったり、ネットで探したりしましたが、自分が思い描いていたものが一つも見つかりませんでした。
亡き人が極楽浄土にいてほしい、極楽浄土にいるんだ、という想いがあります。
古いタイプの仏具だとなかなかそれがイメージしにくく思いました。
まず、大いに悩んだのが、、、御本尊です。
うちの家系の宗派について、親戚に聞いたところ浄土真宗ということがわかりました。
調べてみると一般家庭でおむかえする浄土真宗の御本尊は、正式には絵像になるそうです。
いろいろと仏壇屋に行きましたが、浄土真宗の木像の御本尊の取り扱いはどこもありませんでした。
しかし、自分的には絵像より名号「南無阿弥陀佛」のほうが、日々唱えるのに適していると思い、住職に確認しました。魂入れをしていただくのに、名号で構いませんかと。
そしたら名号で大丈夫ということでしたので、まずは木製の位牌を家具工房に頼み、手彫りで名号を彫っていただく彫り師を探すことにしました。
家具工房に位牌を依頼する時はかなり勇気いりました。
そんな依頼どこの家具工房も受けたことはないだろうと。
しかし、煮詰まっていたので、以前チェストの制作を依頼したSERVEさんに問い合わせました。
SERVEさんは快く引き受けてくれた上、位牌のデザインまでしてくれました。
これは泣く。
自分が思い描いていた位牌というのは、縦型の表札に台がくっついた簡素なものをイメージしていたのですが、SERVEさんは親身になって考えてくださり、素敵なデザインをしてくださったのでした。
妙な依頼を引き受けてくれただけでもありがたかったのに、デザインまでしてくださるとは。
故人の分はイタヤカエデ、御本尊の分はチェリー材で2つ注文しました。
次に彫り師探しですが、これが一番きつかったです。
問い合わせてみると、世の中の位牌の彫り師は、漆塗り位牌専門の方がとても多いのです。
無垢材位牌の依頼が過去になかった、と言いますか、言ってしまうと、無垢の材を彫った文字の部分に金色を入れるという作業を大変に思われる方が多いのです。
漆塗り位牌は仮に彫りを失敗しても、修正がきくということでした。
さらには、塗装していない無垢材に文字を彫ったとして、その文字に金色を施した場合、木目の溝に金色が入ってしまい、文字の周りが朧月夜のようにうっすら金色に染まる、と言われてしまいました。。。
無垢材の位牌を作るということが、こんなに困難なことだとは思いもしませんでした。
無垢材にこだわるのはやめようと諦めかけたところで、1軒、試してみましょうか? と言ってくださった方がいました。
広島の位牌彫刻工房太洋堂さんです。
位牌と同じ木材のサンプル材を送ってもらえれば、一回それで試し、引き受けるか返事しますとのことでした。
そしてお時間をくださいと。
藁にもすがる思いで、家具工房からサンプル材を取り寄せ太洋堂さんに送りました。
そのサンプル材に試し彫りをしていただき、返送下さいました。
イタヤカエデのサンプル材で試し彫りをしていただきました
とても丁寧できれいな字で、見ていて健やかな気落ちになり、この時生まれて初めて文字で癒されたのでした。
なんでしょう、この感覚。たった3文字なのに。サンプルなのに。
字というのはおそらく絵と同じように人柄が出るのだと思います。
彫った方の真摯な姿を垣間見たような感覚に陥りました。
今でもこのサンプル材は棚に飾っております。
それから正式に注文することになりました。が、しかし、名号については荷が重いと固辞されましたので、故人の位牌のみ彫っていただき、名号を彫っていただける彫り師をまた一から探すことになりました。
途方に暮れる思いがしましたが、探し続けたところ、一軒若手の彫り師が引き受けて下さいました。
京都の 冨田工藝さんです。
とても丁寧で親切な対応で、字も丁寧で素直で、金色の入れ方も力強く、気に入りました。
これで、長い彫り師探しが終わったのでした。
チェリー材に名号を彫っていただきました
楽天で探していたら、お札置きというのもありました。
お寺で「南無阿弥陀佛」のお札を購入して、お札置きに立てかけるというのもありですね。
Serve
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-35-10-1F
0422-23-7515
太洋堂
広島県福山市新市町戸手308番地
0847-51-2039
冨田工藝
京都市東山区五条橋東2-36-2
075-541-0123
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